キャラクター&開発コンセプト


「ワゴンとSUVの融合」をリッタークラスでも


スズキ クロスビーの画像
スズキ クロスビー(2017 東京モーターショー参考出品車)

2017年12月25日に発売されたスズキの新型車「クロスビー」は、スズキによれば「ワゴンとSUVの要素を融合させた新ジャンルの小型クロスオーバーワゴン」。であるが、一般的には軽自動車のクロスオーバーSUV「ハスラー」(2014年1月発売)の普通車バージョンといった方が分かりやすいだろう。「ハスラーの小型車版が欲しい」という市場からのリクエストに応えたクルマだ。

 

スズキ イグニスの画像
スズキ イグニス(2016年)

メカニズム的にはハスラーの単なる拡大版ではなく、車台はイグニスやソリオに採用されている新世代の軽量・高剛性プラットフォーム「ハーテクト」、通称Aプラットフォームがベース。デザインもクロスビー専用とされた。乗車定員はハスラーの4名に対して5名になる。

1.0Lターボとマイルドハイブリッドを初めてセットに


スズキ クロスビーの画像
新型クロスビー(参考出品車)とハスラー (2017 名古屋モーターショー)

パワートレインには、マイルドハイブリッドとの組み合わせは今回初となる1.0L 3気筒・直噴ターボエンジンと6速ATを採用。ちなみに1.0LターボエンジンがAプラットフォームに搭載されるのも今回が初だ。駆動方式はFFと4WDを設定する。

4WDシステムはハスラーと同じビスカス方式で、ハスラー同様に、雪道やアイスバーンでの発進・加速時にタイヤの空転を抑える「スノーモード」、ぬかるみや滑りやすい路面での発進をサポートする「グリップコントロール」、急な坂を下る際に車速を約7km/hに維持する「ヒルディセントコントロール」が採用されている。

また、予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」を採用。単眼カメラと赤外線レーザーセンサーを使用した衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)」に加えて、スズキ小型車で初となる後退時の衝突被害軽減ブレーキ「後退時ブレーキサポート」が採用されている。

月販目標は2000台


スズキ クロスビーの画像

月販目標台数は2000台。グローバルで生産・販売するイグニス(同1500台)より多く、スイフトシリーズ(スイフトスポーツを含めて同3500台)の半分強、ハスラー(同5000台)の4割方に相当する。

気になる販売実績は、2018年1月が2442台(登録車で31位、スズキ登録車では23位ソリオ、28位スイフトに次いで3位)、2月が2905台(登録車で30位、スズキ登録車では24位ソリオ、27位スイフトに次いで3位)とまずまず順調。というか、ソリオの手堅い好調ぶりにも驚くが。

■過去の新車試乗記
スズキ イグニス(2016年4月掲載)
スズキ ハスラー(2014年2月掲載)


 

価格帯&グレード展開


176万5800円からスタート。上級グレードは200万3400円?


スズキ クロスビーの画像
上級グレード「ハイブリッドMZ」(ボディカラーはスピーディブルーメタリック)。下位グレードとの識別点はLEDヘッドランプ、LEDサイドターンランプ付ドアミラー、メッキドアハンドルなど(photo:SUZUKI)

エンジンは全車1L 3気筒ターボ、変速機も全車6速ATだが、駆動方式はFFと4WDから選べる。

グレードはベースグレード「ハイブリッドMX」と上級グレード「ハイブリッドMZ」の2種類。グレード間の価格差は23万7600円と小さくないが、前者はスズキセーフティ サポートパッケージ(デュアルセンサーブレーキサポートやフロントサイド&カーテンシールドエアバッグ等のセットで10万6920円)、LEDパッケージ(LEDヘッドライトやオートライトシステム等のセットで7万1280円 もしくは 7万5600円)がオプションになる一方で、上級グレードの後者にはそれら安全装備に加えて、内外装の加飾、クルーズコントロール、撥水加工シート、防汚タイプの荷室、各種ユーティリティ装備が標準装備になる。となると、やはり上級グレードを選びたくなるところ。16インチアルミホイールは全車標準になる。

 

スズキ クロスビーの画像
「スーパーブラックパール」の2トーンルーフ・3トーンコーディネート仕様車(2017 東京モーターショー参考出品車)

ボディカラーは、2トーンルーフ6色、モノトーン3色、ルーフとドアスプラッシュガードのカラーパネルを組みあわせた3トーンコーディネート2色の、全11パターンを用意。そのうち、カタログの表紙を飾る「ラッシュイエローメタリック(ブラックルーフ)」と、今回の試乗した「キャラバンアイボリーパールメタリック(ホワイトルーフ)」が新色。後者はハスラーの「シフォンアイボリーメタリック」に似ているが、ベージュ感が強い新規開発色だ。

さらに2トーンルーフ・3トーンコーディネート仕様車は4万3200円高。オーディオヘッドユニットは販売店オプション。イグニス(138万2400円?)の同等装備車と比べるとエンジンおよびミッションが異なるせいもあるが、30万円ほど高い感じ。また、ハスラーのターボと比べると、50万円ほど高くなる。

■クロスビー (1.0L 直3ターボ・6AT)
・HYBRID MX 176万5800円(FF)・190万8360円(4WD)
・HYBRID MZ 200万3400円(FF)・214万5960円(4WD)

 

パッケージング&スタイル


コンセプトは「愛すべき相棒」


スズキ クロスビーの画像
試乗車のボディカラーは新色「キャラバンアイボリーパールメタリック(ホワイトルーフ)」

パッと見、「大きなハスラー」という感じだが、大きいと言っても全長は3.7mちょっと、全幅も5ナンバー枠まで余裕を残した1670mmで、3ナンバー当たり前の昨今からすると、普通車としてはかなりコンパクトだ。

 

スズキ クロスビーの画像

デザインコンセプトは「一緒に毎日の楽しさを広げていきたくなる“愛すべき相棒”」。スズキとしては「筋肉質で」「力強くたくましい」ものを目指したようだが、何となく「ぽっちゃり系のハスラー」という印象もある。

 

スズキ クロスビーの画像

ハスラーそっくりのヘッドライトや直立したAピラーなどに惑わされてしまうが、ジムニー譲りのスクエアな面やラインが印象的なハスラーに対し、クロスビーは曲面や曲線を多用していて、方向性はある意味まったく異なる。デザイナー陣にも、単なるハスラーの拡大版にはしない、という思いがあったそうだ。ちなみにハスラーとの共通パーツは、外観に関してはアウタードアハンドルだけとのこと。

 

スズキ ハスラーの画像
こちらはハスラー

ボディサイズは全長3760mm×全幅1670mm×全高1705mm、ホイールベース2435mm。全高以外の数値は、イグニスとほとんど同じだ。

最小回転半径はハスラーより0.1m大きいだけの4.7m。175/60R16の大径タイヤを履き、最低地上高はハスラーやイグニスと同じ180mmを確保する。

 

    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スズキ ハスラー(2014?) 3395 1475 1665 2425 4.6
スズキ ジムニー シエラ (JB43型、2002?) 3600 1600 1705 2250 4.9
フィアット パンダ 4×4 (2014?) 3685 1670 1615 2300 ?
スズキ イグニス (2016?) 3700 1660 1595 2435 4.7
スズキ クロスビー(2017?) 3760 1670 1705 2435 4.7
スズキ スイフトスポーツ (2017?) 3890 1735 1500 2450 5.1
トヨタ アクア クロスオーバー(2017?) 4060 1715 1500 2550 5.4
日産 ジューク(2010?) 4135 1765 1565 2530 5.3
新型スズキ エスクード(2015?) 4175 1775 1610 2500 5.2


 

インテリア&ラゲッジスペース


立体的なデザイン、広々したスペース


スズキ クロスビーの画像

インテリアについてもハスラーで好評の、Aピラーとフロントガラスの立った感じや見晴らしの良さ、カラーパネル等を踏襲しつつ、より立体感や質感のあるインパネデザインを採用。モチーフはインパネを横に貫く「2本のパイプフレーム」とのことで、よく見るとダッシュボードの両端にはエンドキャップ風のパーツまで付いている。

 

スズキ ハスラーの画像
こちらはハスラー(2014年モデル)のインパネ

インパネのカラーパネルは全車アイボリーが標準だが、もちろん販売店オプションでイエロー、オレンジ、レッド、ブラックなどにも変更できるほか、上から貼るだけのデカールセットも用意されている。。

上級グレードに撥水加工シートを採用


スズキ クロスビーの画像

上級グレードのシート表皮は撥水加工されたもので、ボディカラーに応じて3種類あるアクセントカラーがパイピングなどに配される。前席シートヒーターやチルトステアリングは全車標準だが、テレスコ(前後調整機能)はない。

助手席下のバケツ&収納スペースや、そのまた下にマイルドハイブリッド用のリチウムイオン電池があるところなどは、ほかの主要スズキ車と同様だ。

 

スズキ クロスビーの画像

軽自動車より一回り大きいとはいえ、全長3760mm、ホイールベースは2435mmという寸法は普通車としては最小レベルと言えるものだが、そこはさすがスズキ、後席スペースは広々としており、上級グレードには折畳み式のテーブルまで装備されるほど。後席は前後スライドが可能で、前席乗員と会話するなら少し前に出した方がいい感じだ。

 

荷室容量は可変。フルフラットも可


スズキ クロスビーの画像

荷室容量はAセグメント相応という感じで、スイフトのような広さはないが、普段の買い物には十分。容量は後席のスライド位置(165mm可動)によって変わり、後席を後端にした状態では124L、前にスライドした状態では203L。上級グレードでは、荷室が防汚タイプ、つまりフロアボードが汚れても掃除しやいように樹脂製になる。

 

スズキ クロスビーの画像

リアシートの背もたれを倒せば最大520Lで、フルフラットなフロアが広がる。さらに助手席の背もたれを倒せば、じゅうたんや短かめのサーフボード(ショートボード)のような長物も積載可能だ。このあたりのシートアレンジ方法も、絶対的な寸法こそ違うが、ハスラーと同様だ。

 

スズキ ハスラーの荷室の画像
こちらはハスラーの荷室

また、床下には同じく樹脂製で、取り外して丸洗いも可能なラゲッジアンダーボックスがあり、靴などを気がねなく放り込める。容量はFFで81L、写真の4WDで37Lだ。

その下にはパンク修理キット、パンタグラフジャッキ、三角表示板が収納されている。

 

スズキ クロスビーの画像

 


基本性能&ドライブフィール


1.0L 3気筒ターボ車の第3弾


スズキ クロスビーの画像

今回は浜松のスズキ本社にて、新型スペーシアと合わせて試乗した。借用したクロスビーは上級グレード「ハイブリッドMZ」の4WD(2トーンルーフ仕様で218万9160円)。つまり一番高い仕様だ。

クロスビーの1.0L 直3 直噴ターボ、通称「ブースタージェット」エンジン(K10C型)は、アイシンAW製6速ATと共に、すでにバレーノのXT(2016年5月発売)や現行スイフトのRSt(2017年1月発売)に搭載されているもの。つまりクロスビーはこの1.0L直3ターボエンジンの第3弾ということになる。

ただしこのエンジンがスズキお得意のマイルドハイブリッドと組み合わされたのは今回が初。つまり、アイドリングストップはもちろん、ISG(モーター機能付発電機)によるスムーズな再始動や加速時のアシスト、減速エネルギーによる充電機能などが採用されている。おそらく、いずれスイフトRStもマイルドハイブリッド仕様になるのだろう。

 

スズキ クロスビーの画像

さて、バレーノやスイフトでは元気いっぱいな走りが印象的だったK10C型エンジン。クロスビーの場合も、FFで960kg、4WDで1000kgの車重に対して、最高出力は99ps、最大トルクは150Nmということで、動力性能に不満はない。

さらにマイルドハイブリッドであるクロスビーの場合は、3.1psと50Nmの微力とは言え、発進や加速時にISGのアシストも最長で30秒間、加わる(あんまり体感できないが)。

 

スズキ クロスビーの画像

とはいえ、今回は試乗車が4WDだっせせいか、はたまた車重がスイフトRSt(FFのみで930kg)より多少重かったせいか、あれほどブンブン走る感じはなかった。ま、試乗車がFFでれば、40kgほど軽くなるので、また印象が違ったかもしれない。細かい話をすると、バレーノXTはハイオク仕様だし、レギュラー仕様のスイフトRStとクロスビーもエンジンのセッティングは異なるようだ。

ちなみにギア比はスイフトRStやバレーノXTとまったく同じで、タイヤ外径もほとんど同じだ(スイフトRStとバレーノXTは185/55R16で、クロスビーは175/60R16)。

 

スズキ クロスビーの画像

試乗中に気になったのは、50?60km/hくらいで一般道を巡行する時、3気筒エンジンの振動がたまに顔を出すこと。この時のエンジン回転数は1400rpm程度と低め。燃費を稼ぐためだと思うが、もう少しシフトアップのタイミングを遅らたいところ。4WD車に標準装備の「SPORT」ボタンを押せば振動は消えるが、そうすると今度はレスポンスがよくなり過ぎるきらいがある。

イグニスよりゆったり


スズキ クロスビーの画像

冒頭でも触れたようにプラットフォームはイグニスやソリオと同じAプラットフォームで、走らせた感じも、なるほど確かにイグニスに似ている。とはいえ、サスペンションはクロスビー専用チューニングで、ゆったりした乗り味になっている。車重もイグニスと比べると80kgほど重い。

静粛性もイグニスと同等という感じで、Bプラットフォームを使うスイフトRStと比べると、一歩譲る印象。全体に何となく騒がしい感じはある。

ACCはないが、自動ブレーキは前進および後退に


スズキ クロスビーの画像

100km/h巡行時のエンジン回転数は6速トップで約2100rpm。高速道路でもパワーは十分だが、速度域が上がると接地感が何となく薄れるほか、風切り音が目立つ傾向。エンジンに余裕があるだけに、そこがちょっともったいなくはある。

残念なのは、バレーノやスイフトでは選べるACC(アダプティブクルーズコントロール)がないことだ。その代わりに、クロスビーの上級グレードには通常のクルーズコントロールが標準装備されている。従来通り100km/h+αまでしか設定できないものだが、あればあったで遠くに出かける時は便利だ。

 

スズキ クロスビーの画像

なお、ACCはないが、いわゆる自動ブレーキ等の先進安全装備は充実している。ベースグレードだとオプションで「セーフティ サポートパッケージ」(10万6920円)を装着しなくてはいけないが、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)」のほか、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ヘッドランプのハイビーム /ロービームを自動で切り替えるハイビームアシスト、リヤパーキングセンサー、そしてスズキ小型車では初となる「後退時ブレーキサポート」などが採用されている。最後のはリアバンパーに内蔵した4つの超音波センサーで後方の障害物を検知し、ぶつかりそうになると自動ブレーキが働くというもの。

4WDシステムはハスラーと同じビスカス式+電子制御


スズキ クロスビーの画像

せっかくの4WD車だったので、オフロードも少し走ってみた。4WDシステムは、現行エスクードやSX4 Sクロスのような電子制御多板クラッチ式「ALLGRIP(オールグリップ)」ではなく、ハスラーと同じビスカスカップリング式のフルタイム4WDになる。

 

スズキ クロスビーのリアサスペンションとリアアクスルの画像
4WD車はスズキ車でおなじみのI.T.L(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)式

さらにハスラー同様、雪道やアイスバーンでの発進をサポートする「スノーモード」、ぬかるみなど滑りやすい路面で発進をサポートする「グリップコントロール」、急な下り坂で車速を約7km/hで維持する「ヒルディセントコントロール」も標準装備される。要するに4WDシステムの仕組み自体はハスラーと同じだ。

 

スズキ クロスビーの画像

そして最低地上高もハスラー(FFは180mm、4WDは175mm)と同等の180mm。ただし、アプローチアングルは19.7度(ハスラーは28度)、ディパーチャーアングルは40.4度(同じく46度)となる。こうして見ると、ハスラーもなかなかだ。

試乗燃費は12.6km/L。JC08モード燃費は20.6km/L(4WD)?22.0km/L(FF)


スズキ クロスビーの画像

今回は約120kmほど試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道や高速道路を走った区間(約60km)が12.6km/Lだった。大人しく走ればもっと良かったと思うが、アクセルを踏むと気持ちよく加速してくれるので、ついつい踏んでしまった。

JC08モード燃費はFF車で22.0km/L、試乗した4WD車で20.6km/L。指定燃料はバレーノXTのようなハイオクではなく、スイフトRStと同じレギュラーでOK。

燃料タンク容量はイグニスと同じで、FF車が32L、4WD車が30L。現実的な航続距離はおおよそ300?350km程度だろう。


ここがイイ


ゆとりはあるし、絶対的にはコンパクト


スズキ クロスビーの画像

ハスラーは欲しいけど軽自動車はイヤ、という人がどれだけいるか分からないのが、軽自動車のハスラーではある意味ギリギリだった動力性能、室内の広さ(特に室内幅)、荷室の広さ、そして装備、デザインといったものにおいて、クロスビーは「ゆとり」を得たこと。特に動力性能には余裕がある。4WDを選ぶ気にさせる力強さがある。

コンパクトなサイズ。ハスラーより大きいが、普通車として今どき貴重な小ささ。全幅が1670mmと聞いただけでも嬉しくなる。今どきの3ナンバー「コンパクトSUV」に辟易している方には、まっこと買う気にさせられるクルマだろう。

ここがダメ


ACCがないこと。ハスラーの存在


スズキ クロスビーの画像

プラットフォーム的にはイグニスやソリオと同クラスだが、価格的にはバレーノを大きく上回り、スイフトやエスクードに肩を並べることもあって、後者3モデルに設定されているACC(アダプティブクルーズコントロール)がないのは残念至極。ここは一つ、スイフトど同内容のデュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)とACCのセットを設定してほしかった。

本文でも触れたが、一般道で巡行する時に3気筒エンジンの振動をたまに感じること。変速プログラムやギア比を少しいじれば収まりそうなレベルだが、スイフトRStやバレーノXTでは気にならなかったので、ひょっとすると4WD車だとちょっと目立つのかもしれない。

クロスビーに試乗してみて、あらためてハスラーのデザイン、走り、パッケージングといった面でのまとまりの良さに気付かされた。価格もハスラーの方がターボでも50万円ほど安いし、悩ましいところ。

総合評価


軽規格がいつ撤廃されてもどんと来い


スズキ クロスビーの画像

昔から繰り返し書いているのは、偉大な日本車である軽自動車の幅をちょっと広くして、排気量をちょっと大きくしたら、世界に通用するコンパクトカーができるはず、ということ。スズキは昔からそれにチャレンジしていた。ワゴンRプラス、とかKeiのワイド版だった初代スイフトとか、もっと古くは名車フロンテクーペを軽の規格アップに伴ってセルボにした、なんてこともあった。

そんな目で見ると、クロスビーはプラットフォーム云々というメカニズムの話は別として、ハスラーの拡大版だし、イグニスはアルトの拡大版だ。いやグローバルな目で見た場合、イグニスの縮小版がアルトで、クロスビーの縮小版がハスラーに見えるのかもしれないが。

 

スズキ ハスラーの画像
スズキ ハスラー(photo:SUZUKI)

こうしたAセグメントのクルマたちは、軽規格がいつ撤廃されてもどんと来いとばかりに、着々と作られている。ヒット車ソリオもその中の一台だ。クロスビーもソリオもいちおう国内専用車として開発されているが、オリジナリティあふれるこの2台はぜひ海外でも勝負してもらいたいものだ。そしてこれらのAセグカーは、スズキが脈々と作ってきた軽の素晴らしさを昇華させたものとして企画されているのでは、などと思う。特にクロスビーは、ハスラーというグレイトな軽をなんとしても世界に問いたいと企画されたのではないか、とうがった見方をしてしまいたくなる。

 

ソリオハイブリッドの画像
ソリオ ハイブリッド

国内で走る分にはハスラーの、特にターボなら、動力性能や室内空間も十分なのだが、世界ではちょっと厳しい。そこでクロスビー。これなら走りや室内空間にもいわゆる余裕がでてくる。チョイノリの足クルマではなく、これはもう世界に問える立派な「小型車」だ。今は軽が維持費の面でまだまだ優遇されているから比較しづらいが、もし軽の税金が上がったりしたら、ハスラー購買者の半数以上はクロスビーへ流れるのではないか。クロスビーを見ていると軽がいかに特殊なものか再認識させられる。

趣味のクルマとしても、実用のクルマとしても


スズキ クロスビーの画像

ただ、軽自動車は、ギチギチの規格の中で性能やデザインを研ぎ澄ますような開発を強いられるだけに、ある意味では「尖った」クルマだ。クロスビーとハスラーを見比べると、デザインではハスラーのシャープさが際立つ。決められたサイズの中で、苦心してデザインされたことの機能美というか道具っぽさが、とても潔く見えるのだ。その点、クロスビーは余裕がある分、やや緊張感が足りないようにも思える。ここらは難しいところだが。

同じく好みの問題かもしれないが、デザイン的にはハスラーにはないボディサイド下面の黒い樹脂パネルが不要に思える。これがなければ前後フェンダーアーチの樹脂部分がオーバーフェンダー的により強調されたと思うのだが。Cピラーもちょっとデザインされすぎ感が。初期のアイデアスケッチを見ると、ハスラーをごくプレーンに大きくしただけのモデルもあるが、横の樹脂バーもなく、すっきり感が好ましく見えてしまう。それでは芸がないという判断だったのかもしれないが。

 

スズキ クロスビーの画像

ただ、ハスラーが出た時、軽トラを欲しがるような熟年層にはハスラーはぴったり、なんて書いたが、それは乗用車を持っているジイさんのセカンドカーとしてなら、という条件がつく。ハスラーだけでは、ちょっと遠出という場合に少し考えてしまう(むろんできなくはないが)。その点、普通車のクロスビーならファーストカーとして使える。これ一台でどこへでも行けるという点で、これは熟年層の足として100%文句なし。趣味のクルマとしても、実用のクルマとしても使えるだろう。

先進安全装備は、最新のものを全部載せで用意すべき


スズキ クロスビーの画像

こうなると、ジイさん的には最新の安全運転支援システムがいろいろ欲しい。クロスビーの場合、軽以外のスズキ車としては初の新機能として、後退時ブレーキサポートと、後方への誤発進抑制機能がついた。バックのときには超音波センサーで障害物を検知して自動ブレーキがかかるし、ペダルの踏み間違いによる誤発進も抑制する。細いポールなどは感知できないこともあるようで、どんな場合でも作動するわけではなさそうだが、バックで電柱にぶつけたりすることはなくなるだろう。これは誰にとってもありがたいもの。4台のカメラで俯瞰的な自車映像を見ることができるオプションの全方向モニターもあれば、より安全かもしれないが、これは使いこなせる自信のある人向きかも。

その一方で、ミリ波レーダーがないのはちょっと、というか、かなり残念。ACCはすでに搭載車が急速に増えている以上、もはや絶対に必要なオプションだろう。なにより、クルマはそう簡単に買い替えられないものだから、いずれ搭載されるだろうと思うと購入をちょっと躊躇してしまう。ここが昨今の難しいところだが、どんどん進化する運転支援システムについては、新型車であればとにかく最新のものを全部載せで用意する、という風にしないと、客を逃がすと思う。

ぜひとも世界で勝負して欲しい


スズキ クロスビーの画像

ということで、ハスラーに足りないものを補ったのがクロスビー。そうして余裕を得たかわりに失ったものもあるにはあるが、軽の素晴らしさをAセグに反映できたモデルだと思う。そしてこのクルマの「パイクカー」的な、カワイクて個性的デザインは、すべてを超えて大きな魅力といえる。クロスビーもイグニスも、クロスオーバーテイストが加わって、昨今の売れるためのキーワードであるSUVっぽさも入っている。ここがワールドワイドで受け入れられるためのキモだ。

MINIやフィアット500はまだまだ人気がある。そしてMINIも500も、クロスオーバーモデルを揃えている。クロスビーもそれらに負けないだけの絶対的なデザインパワーを持っていると思う。日本車としては稀有な存在であり、ぜひとも世界で勝負して欲しいもの。カワイイは世界の共通語なのだから。

 
 
Source: MOTOR DAYS 最新コンテンツ