キャラクター&開発コンセプト

80kgの軽量化。助手席にスーパースライドシートを採用

ホンダ N-BOXの画像
ホンダの「N-BOX(エヌボックス)」は東日本大震災のあった年の暮れ、2011年12月に発売された軽自動車のスーパートールワゴン。 「日本にベストな新しいのりもの」というキャッチフレーズで登場した初代N-BOXは、その狙いが正しかったことを証明するように大ヒット。発売から5年半余りで累計販売台数112万台となり(2017年8月時点)、またモデル末期の2015年と2016年を含めて4度も軽の年間新車販売台数1位となるなど、常識破りの売れ方を見せた。それまで軽自動車市場でスズキとダイハツの二強に水をあけられていたホンダにとっては、まさに起死回生の一台となった。
 
ホンダ N-BOXの画像
そんなN-BOXが約6年ぶりにフルモデルチェンジし、2代目となる新型が2017年8月31日に正式発表、9月1日に発売された。 好評だった外観デザインはほぼキープコンセプトながら、プラットフォームやパワートレインは一新。車重を約80kg軽量化したほか、新開発のロングストロークエンジン「S07B」を採用することで、加速性能や燃費性能を改善している。また、前後ウォークスルーを可能にする助手席スーパースライドシートの新設定も目玉の一つだ。

ホンダセンシングを全車標準化

ホンダ N-BOXの画像 Honda SENSING
従来の軽自動車とは一線を画すという思想は、安全装備でも貫かれており、新型N-BOXでは単眼カメラとミリ波レーダーを併用する先進安全・運転支援システム「ホンダセンシング(Honda SENSING)」をホンダの軽で初採用し、それも全車標準とした。これによって衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能、オートハイビームのほか、ステアリング制御を行うLKAS〈車線維持支援システム〉、路外逸脱抑制機能、歩行者事故低減ステアリングといった、普通車の上位モデルに匹敵する先進安全装備を備えることになった。

販売目標は月1万5000台

生産は従来通り本田技研の鈴鹿工場で、販売目標台数は月1万5000台、つまり年間18万台。これは普通車も含めて、新車販売のトップを狙える数字だ。発表前から既納ユーザーへの告知やティザー広告が行われたこともあり、受注台数は発売時点で約2万5000台、発売後約1ヵ月の時点(10月4日時点)で5万2000台以上と発表された。 そして気になる販売実績は、9月が驚異の2万6983台で、国内新車販売ランキングでは普通車を含めてもダントツの1位に(2位は検査不正が発覚する前の日産ノートで1万5469台、3位はプリウスで1万3275台)。10月は2万1234台で引き続き1位だった(2位はダイハツ ムーヴで1万3972台、3位は同タントで1万0660台)。
 
となると気になるのは年間のタイトル。昨年2016年(1?12月)の1位はプリウス(24万8258台)、2位がN-BOX(18万6367台)だったが、2017年の上半期はモデルチェンジ前にも関わらずN-BOXが1位となっており、このまま行けば年間でも1位となる可能性が濃厚だ。 ■外部リンク ホンダ>新型「N-BOX」を発売(2017年8月31日) ホンダ>新型「N-BOX」受注状況について(2017年10月5日) ■過去の新車試乗記 新車試乗記>ホンダ N-BOX スラッシュ(2015年2月掲載) 新車試乗記>ホンダ N-BOX (2012年2月掲載)
 

価格帯&グレード展開

138万5640円からスタート。カスタムは約21万円高

ホンダ N-BOX(標準車)
ラインナップは従来通り「N-BOX」と「N-BOX カスタム」の2本立てで、それぞれにNA(自然吸気エンジン)とターボ、そしてFFと4WDがある。 価格は138万5640円からで、ターボが169万5600円から。N-BOX カスタムは169万8840円からで、同ターボが189万5400円?。ターボはNAの約15万円高、カスタムは標準車の約20万円高という感じで、「カスタムのターボ」ともなると諸経費込みで200万円オーバーになる。ただしミリ波レーダー&単眼カメラ方式のホンダセンシングは全車標準装備だ。
 
ホンダ N-BOX カスタム
ひとまず発売後約1ヶ月の初期受注では、標準車が44%、カスタムが56%と、カスタムがやや多め。エンジン別ではNAが67%、ターボが33%。ボディカラーの一番人気はプレミアムホワイト・パールIIで、全体の3分の1を占める。
 

パッケージング&スタイル

初代の黄金比を踏襲

初代N-BOXがモデル末期でも人気が衰えなかったのは、そのボクシーな外観デザインが大きな要因だったようだが、新型ではデザイン開発もゼロから始めたという。その過程でいろいろな検討や議論があった上での今回のキープコンセプトだ。 ちなみに開発スタッフによると、初代における外観上の特徴は、ベルトライン(サイドウインドウの下縁)がかなり高めで、それを境にした上と下の比率が、いわゆる黄金比と呼ばれる1:1.618だったことにあるそうで、新型でもこの比率を踏襲したという。
 
全高はFF車で10mm、4WD車で15mm高くなったが、全長、全幅、そしてホイールベースは先代と変わらず。とはいえプラットフォームは完全新設計なので、ボディ外板は一新。目立つところではLEDヘッドライトを全車標準としたほか(ハイ/ロー、ウインカーも含めてフルLED)、ボディパネルの角を丸めるなどのデザインワークで質感向上に努めている。
 
なお、N-BOXカスタムについては、LEDランプをふんだんに使ったフロント部分をはじめ、最近の新世代ホンダ車に通じる凝ったデザインを採用。「流れるウインカー」ことシーケンシャルターンシグナルランプも軽で初めて採用している。新型でもカスタムの売れ行きが好調なのは、ホンダがちゃんと市場の好みを捉えているということだろう。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
ホンダ N-WGN (2013?) 3395 1475 1655 2520 4.5?4.7
ダイハツ ムーヴ キャンバス (2016?) 2455 4.4
初代ホンダ N-BOX (2011?2017) 1770?1800 2520 4.5?4.7
新型ホンダ N-BOX (2017?) 1790?1815
ダイハツ ウェイク (2014?) 1835 2455 4.4?4.7
トヨタ タンク/ルーミー(2016?) 3700?3725 1670 1735 2490 4.6?4.7
2代目ホンダ フリード(2016?) 4265?4295 1695 1710?1735 2740 5.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

メーターをアウトホイール化

ホンダ N-BOXのインパネ画像 試乗車はディーラーオプションのシートカバーやドアライニングカバー、ステアリングホイールカバー等を装着したもの
先代のインパネは、ナビスペースをダッシュボードセンター最上部に配し、中段に棚を設けた実用的なデザインだったが、新型でもそれを継承。一方、先代ではオーソドクスな3眼式だったメーターは、新型ではアウトホイールタイプ、つまりステアリングホイールの外側で見るタイプに変更された。これの最大のメリットはメーター視認性が高いことで、最近はホンダのほか、プジョーも好んで採用している。
 
ホンダ N-BOXのインパネメーター画像
また、松葉のように2本になったAピラーの奥側(車両前側)を先代より約27mm細くして(82mm→55mm)、視界をさらに改善。また、左のAピラー根元にあって左前輪や左ドアの真下あたりを映し出す「サイドビューサポートミラー」も先代から継承された。このへんの気配りも初代N-BOX人気の一因であろう。

助手席スーパースライドシートを新設定

ホンダ N-BOXのフロントシート画像
新型ならではのニュースは、これまでの前席ベンチシート仕様(前後スライド量は240mm)に加えて、助手席スーパースライドシート仕様(同570mm)を新たに用意したこと。助手席を後ろにスライドして後席とコミュニケーションをとったり、逆に助手席を一番前にスライドして、運転席から後席にウォークスルーできるようにしたりと、シートアレンジの自由度を高めた仕様だ。
 
ホンダ N-BOXの助手席スーパースライドシート画像
とはいえ、これをセンタータンクレイアウト、つまり前席の下に燃料タンクを置くN-BOXで実現するのはたいへんなこと。まずシートレールを床下に埋め込むため、助手席側を70mm薄くした樹脂製燃料タンクを新開発。4WD車の燃料タンクにいたってはプロペラシャフトを避けるために鞍型とし、超低床用の燃料ポンプモジュールも新開発している。また、助手席の足元スペースを確保するため、エアコンユニットはレイアウトを変更してインパネの中央付近に集中配置した。開発の苦労ぶりは、助手席フロアカーペットの複雑な形状からも伝わってくる。

チップアップ&ダイブダウン機構付リアシートは継続

ホンダ N-BOXのリアシート画像
リアシート自体は新設計だが、機能はおおむね従来通り。チップアップ&ダイブダウン機構付の前後スライド式で、スライド幅は190mm。一番後ろにスライドし、背もたれを少し寝かせて足を伸ばしてもいいし、前に寄せて前席の人との会話を楽しんでもいい。 スライドドアは、ベースグレードだけ両側手動で、中間グレードは助手席側が電動(運転席側の電動はオプションで5万4600円)、そして上位グレード、すなわちターボ車は両側電動が標準になる。両側電動が必要かどうかは意見が分かれるところだが、あれば便利なのは間違いなく、試乗車も両側電動だった。またベースグレードを除けば、リアドアウインドウには収納式の日除けが標準装備されるが、これは今や当たり前か。
 
ホンダ N-BOXのチップアップモード画像 写真はチップアップモード。座面の跳ね上げや元に戻す時の操作は軽く、女性でも簡単に操作できる
もちろん、リアシートの座面を跳ね上げて、後席空間をいわば「第2の積載スペース」とするチップアップモードも継続採用している。これは後席の下に燃料タンクがある一般的なクルマでは逆立ちしても出来ない芸当だ。

荷室も先代より広く、そして敷居は低くなった

ホンダ N-BOXの荷室画像
荷室も先代通り、リアシートのダイブダウン機構や、前後スライドなどで様々なアレンジが可能。リアシートを後席足元に格納するダイブダウン機能は、レバーを引くだけのワンタッチで出来るし、前後スライド操作も室内側と荷室側、どちらからでも出来る。
 
ホンダ N-BOXの荷室画像
荷室拡大時のフロアはフラットではなく、背もたれ側が盛り上がったものになるが、段差は緩やかなスロープ状になっている。また、自転車をより積みやすくするため、リアゲート開口部の敷居は75mm下がり、荷室高は逆に55mm増えている。 なお、車名がN-BOXプラスになるかどうかは不明だが、新型においても荷室をスロープモードにできる仕様を2018年春に発売するとのこと。自転車やバイクなどを積み込むホビー用途や、クルマ椅子等に対応する福祉車両のベースとなるモデルだ。
 
ホンダ N-BOXの荷室画像
荷室のフロアに下は、パンク修理キットやパンタグラフジャッキを搭載。三角表示板が入りそうなスペースは残されているが、それ以外の小物を入れる余裕はない。
 

基本性能&ドライブフィール

NAでも不満なく走るようになった

ホンダ N-BOXのエンジン画像
エンジンは従来の「S07A」に代えて、自然吸気とターボ、ともに完全新開発のロングストロークタイプ「S07B」に変更されている。ボア×ストロークは従来の64.0mm×68.2mm(奇しくもスズキのR06Aエンジンと同じだった)から、新型では60.0mm×77.6mmへと超ロングストローク化されている。これにはダイハツのKF型(63.0mmX70.4mm)も及ばない。 また、NAエンジンは吸気側にVTEC(可変バルブタイミング機構)をおごった「i-VTEC」仕様に。圧縮比は先代初期型の11.2や先代改良型(2014年?)の11.8から12.0に高められている。レギュラーガソリン仕様のポート噴射エンジンとしてはかなり高めの圧縮比だ。 ちなみに先代のS07A改良型エンジンではノッキング防止用にナトリウム封入バルブが採用されていたが、新型ではそれをやめて、代わりに吸排気バルブの燃焼室側に鏡面加工を施しているという。エンジン屋、ホンダらしい話だ。NAの最高出力は58ps、最大トルクは65Nm(6.6kgm)である。 一方、ターボエンジンにはVTECは付かず、直噴化もされなかったが、代わりに軽自動車で初の電動ウエイストゲートバブルを採用。圧縮比は先代の9.2から一気に9.8に上がった。このあたりもホンダの面目躍如だろう。ターボの最高出力は64ps、最大トルクは104Nm(10.6kgm)だ。
 
ホンダ N-BOXの画像
すでに新車発表会の時に標準車のNAとカスタムのターボに短時間ながら試乗しているが、今回試乗したのは標準車のNAで一番装備のいい「G・EX ホンダセンシング」。試乗車は販売店オプションが山のように付いた仕様だったが、車両本体は159万6240円。売れ線グレードの一つだ。 あらためて試乗したNAの第一印象は、出足がスムーズで静か。そして街中を流す時も余裕十分というもの。アクセル開度が低い時のエンジン音は、先代の初期型と比べると段違いに静かで、初代のエンジン改良型と比べても明らかに静か。ディーラーで近所をぐるっと試乗するくらいなら「NAで十分、ターボは要らない!」と確信してしまうだろう。実際、街中レベルでは本当によく走る。 一方で、加速しようと思ってアクセルをベタ踏みすると、エンジンは6000rpmくらいで唸っているのに加速はしないという、これまでの軽のNAエンジン車でおなじみの印象になる。とはいえ、耳ざわりなノイズが遮断されているのは、先代より明らかにいい部分だ。 そしてNAでも高速道路を余裕で走ってくれる。本線への合流時、追越時、坂道だとエンジンはどうしても唸りがちだが、ホンダセンシングのACCに任せて巡行体制に入れば一転して静かに。80km/h巡行なら2500rpmくらい、100km/h巡行でも平地なら3000rpm前後で粛々と巡行してくれる。 ちなみに新型ではCVTも大幅に改良。CVTの油圧を保つオイルポンプのロスを減らすため、2系統吐出オイルポンプを採用して仕事量を約33%低減したほか、プーリーの大径化やCVTオイルの高摩擦係数化などでプーリー油圧を低減して伝達効率を約2?3%高めたという。トルクフルになったエンジンとの相性はなかなかいい。

車重は軽くなっても乗り心地は重厚に

ホンダ N-BOXの画像
大げさに聞こえるかもしれないが、乗り心地は重厚しっとり。新車発表会での印象では、NAよりもターボの方が重厚で静かに感じられたが、今回は試乗車が標準車のNAで最上級グレードの「G・EX ホンダセンシング」だったせいか、これでもう十分と思える重厚感があった。車重は先代より約80kg軽量化されているが、乗り心地は新型の方が明らかにいい。 プラットフォームは高張力鋼板の使用拡大、レーザー溶接、構造用接着材などが導入された完全ニュー。軽量化は車両トータルで150kgに及んだそうだが、新しい装備(ホンダセンシングやスーパースライドシート)などで70kg増えたため、実際の軽量化は差し引き約80kg、ということになる。 そして新型はハンドリングも悪くない。先代は腰高な感じがつきまとい、ワインディングを楽しく走る気には到底なれなかったが、新型はこの背高スタイルから想像できないほどの粘り腰を見せる。少しオーバースピード気味でコーナーに入っても不安感はなく、ステアリングを切ればちゃんと曲がってくれる。おそらくはスタビライザーの強化(リアスタビライザーはFF全車に装備)などの足回りの見直し、そしてブレーキ制御による「アジャイルハンドリングアシスト」が効いているのだろう。タイヤ自体のウエット性能は正直なところ、ほめられたものではないが、それを制御で上手にカバーしてしまう。 あと、ハンドリングの気持ち良さは、電動パワーステアリング(EPS)の改良に負うところも多そうだ。従来通りのコラムアシスト式ながら、コラムシャフトの大径化、ベアリング部の剛性アップ、クイックレシオ化など、設計はまるっと一新されており、走り出した瞬間から「先代と違うぞ」と分かる。

ACCは約30km/h?115km/hで作動

ホンダ N-BOXのACC画像
先進安全装備や運転支援装備については、単眼カメラとミリ波レーダーを併用する「ホンダセンシング(Honda SENSING)」をホンダの軽で初採用し、しかも全車標準装備としたのが目玉だ。 これにより衝突軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)、誤発進抑制機能、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、先行車発進お知らせ機能などのほか、約65km/h以上で走行中に車線中央をキープして走行するようにステアリング制御を行うLKAS〈車線維持支援システム〉、路外逸脱抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、そして標識認識機能やオートハイビームなど、普通車の上位モデルに匹敵する先進装備が手に入ることになった。 実際に使ってみた印象は、ブレーキの警告が早めに出るのは心強いところだし、先行車発進お知らせ機能も相変わらず便利。制限速度などの道路標識を単眼カメラで読み取ってメーターに表示する標識認識機能もかなり確実に作動する。 一方で不満に感じたのは、他のホンダ車(一部の新型車を除く)同様に、車速が約30km/h以下に落ちるとACC(アダプティブクルーズコントロール)が「ピー」という警告音とともにオフになってしまうこと。すでに世の中はスバルのアイサイトを含めて0km/hからの全車速対応、つまり停止まで行うのがスタンダードであり、また、同じホンダ車でも最近発売されたステップワゴンのハイブリッド車や新型シビックなどではACCが全車速対応になっているだけに、ここは惜しいところ。なお、ACCの設定上限速度も従来通り115km/hだ。 また、LKAS〈車線維持支援システム〉や路外逸脱抑制機能、歩行者事故低減ステアリングといった機能は、システム自体はフィットやフリードのものと近いようだが、今回の試乗ではそれほど操舵アシストを感じることはなかった。ヘビーウエットでの試乗がメインだったので車線が読めなかったのかもしれない。

実用的なホンダ式オートハイビーム

ホンダ N-BOXのオートハイビーム画像
今回からホンダセンシングの新機能として追加された「オートハイビーム」は、軽自動車ではまだまだ先進の装備。N-BOXのものは、複数のLEDや遮蔽版を使ってバリアブルに照射範囲を可変するタイプではなく、単純にハイ/ローを切り替えるだけだが、対向車が現れた時などの反応はなかなかよく、照射範囲やハイ/ロー切替のタイミングも適切な優れもの。手動操作に切り替える必要はほとんど感じなった。 また、他社のシステムでは、オートハイビームのメインスイッチをオンにし、さらにライトスイッチをハイビームにした状態で初めてオートハイビームがオンになるものが多いが、それだと手動でとっさにロービームからハイビームに切り替えるのが難しい。しかし、N-BOXで採用されたタイプは、ライトスイッチを「オート」位置にすれば、オートハイビームも連動してオンになる方式。これだとオートハイビーム使用中でも、ライトレバーを通常通りハイビームにするだけでローからハイにできる。これなら誰でも自然に使いこなせるだろう。

試乗燃費は15.6?19.1km/L。JC08モード燃費は27.0km/L(NAのFF車)

ホンダ N-BOXのガソリン給油中の画像
今回は約260kmを試乗。参考ながら試乗燃費は一般道と高速道路を走った区間(約110km)が15.6km/L。一般道を普通に走った区間(約30km×2回)が昼間の市街地で17.9km/L、夜間の郊外で19.1km/L。高速道路では区間が短いので参考ながら18.7km/Lだった。660ccのNAエンジンを何度かぶん回し?車重930kgのボディを走らせた結果としては、相当に優秀だと思う。 なお、JC08モード燃費は、NAが27.0km/L(4WDは24.2?25.4km/L)、ターボが25.0?25.6km/L(4WDは23.0?23.4km/L)。 燃料タンク容量はFF車が27L、4WD車が25Lと少なめ。それでもFF車なら、航続距離はおおむね400km程度と考えていいだろう。

ここがイイ

先代から大幅に良くなったエンジン、ハンドリング、オートハイビーム

ホンダ N-BOXの画像
新開発のVTEC付NAエンジン、そしてマイナス80kgもの軽量化は、走り、燃費、乗り心地に効いており、それはチョイ乗りでもすぐに実感できるほど。先代の初期モデルは、特にNAモデルだと非力でノイジーで燃費もイマイチといった印象だったが、後期型でかなり良くなり、この新型ではほとんど文句のつけようがないものになった。ターボ車ならまったく不満はないだろう。 操縦安定性も見かけによらずしっかりしており、急な操作をした時の安定感にも感心させられた。その上でホンダセンシングは全車標準。パッケージングも素晴らしい。「軽としては」と書くのをためらうほど、諸々のレベルが高い。
 
ホンダ N-BOXのインパネ画像
ナビディスプレイのサイズと位置がいい。位置は先代とほぼ同じだが、試乗車は8インチの大画面ディスプレイだったせいもあり、それとほぼ同じ高さのアウトホイールメーターともども視線移動量が少なく、市販車でベストか?と思うくらい見やすかった。 ホンダセンシングに含まれるオートハイビームは、本文でも触れたように、状況に応じて適切にハイ/ローを切り替えてくれるし、操作方法も簡単。他社もさっさとこの方式にした方がいい。

ここがダメ

30km/h以下でオフになるACC

これは高速道路をよく使うならば、ということだが、他のホンダ車(一部を除く)同様に、ホンダセンシングのACC(アダプティブクルーズコントロール)が約30km/h以下になると「ピー」という警告音とともにオフになってしまうこと。すでに世の中は0km/hからの全車速対応、つまり停止まで行うのがスタンダードなので、他メーカーのACC装着車から乗り換えるた時は頭を切り替える必要がある。本文でも触れたように同じホンダ車でも新型シビックなどのACCはすでに全車速対応なので、軽もなるはやで全車速対応にして欲しいところ。 ドライビングポジションについては、気にならない人もいると思うが、左足もとの左側にセンターコンソール根元の壁があり、それが多少気になること。また、これだけよく出来たクルマなので、ステアリングにテレスコ(伸縮)調整もあればいいと思った。ステアリングをもう少し手前に引けると、足もとのゆとりも出てきそうだ。 あと、NAでも出足や巡行時のトルク感は十分で「ターボは要らないかも」と思うのだが、いざという時にアクセルをベタ踏みすると、絶対的なパワーのなさを痛感する。つまり常用域のトルクは軽自動車ばなれしているが、加速時のパワー感は馴染み深いノンターボの軽そのもの。それがイヤならターボ車を、ということになる。

総合評価

ぶっちぎりで売れている

ホンダ N-BOXの画像
ホンダの業績は好調だという。2017年4?9月期連結決算(国際会計基準)では純利益が前年同期比8%増の3813億円とのこと。4輪車の年間販売台数は500万台規模と大きくはないが、北米で200万台弱、アジア・オセアニアでは200万台強売っており、しかもホンダの場合、4輪だけでなく2輪車、そして汎用エンジンや発電機などのパワープロダクツが世界的には大きな地位を占めている。ものづくりなど、もはやメロメロの印象が強いニッポンだが、自動車だけはまだまだということか。そこが今後の強みなのかも。 国内生産では埼玉県の狭山工場を閉め、同じ埼玉だが、より郊外の寄居工場へ集約することに。雇用は確保されるとのことだが、下請け企業の従業員等の場合はより大変だろう。厳しい日本の現実の一端を見る思いだ。ただし軽自動車は三重県の鈴鹿で作り続ける。そこで作っているのがこのN-BOXだ。メイド・イン・スズカの国内専用車であるN-BOXは、まさにニッポンののりもの。ニッポン人ならこれに乗れ、とバイ・ジャパニーズな気分で言いたくなる。そこのクルマ好きで輸入車好きのあなた、あなたですよw
 
そんなあなたのことなど気にすることもなく、N-BOXはぶっちぎりで売れている。2017年10月の販売は2万1234台と全車種でトップ。2位はムーヴ 1万3972台、3位はタント1万0660台。このあとにアクア、プリウスと続くが、いつものように兄弟車の存在を考慮すると、トヨタのヴォクシー、ノア、エスクァイアの3兄弟が1万6132台、トヨタ タンク、ルーミー、ダイハツ トール、スバル ジャスティの4兄弟が1万5439台(数字はwebサイトのクリッカーより)となって、10月の実質的な順位は1位 N-BOX、2位 ヴォクシー3兄弟、3位 タンク4兄弟の順になるが、それでもN-BOXはダントツ。これまで売れた初代112万台の代替え需要も見こせば、今後も売れ続けるだろうことは間違いない。試乗すると分かるように、初代とは比較にならないほど良くなっているのだから。

軽自動車で、よくぞここまで

ホンダ N-BOXの画像
初代が売れた理由を思うに、タントとは違って、オッサンでも乗れるスーパートール軽だったことがある。スタイリングは妙に女性ウケ狙いでなく、硬派でかっこよかった。しかし新しいN-BOXは少々女性っぽく見え、初代のユニセックス感はずいぶん薄れてしまったようにも感じられる。しかも発表会ではファッショナブルな都会の女性狙いといったマーケティング戦略も感じられて少し興ざめしてしまった。これについては最近「そういうことだったのか」と思いなおす部分も多々あるのだが(後述)、にしても先代ほど売れるのは難しいのではという第一印象を持ったのは事実だ。 発表会でのチョイ乗りでは、ターボの上質な走りに驚いたが、NAはやっとスズキなどに追いついたかなという感じで、やはり買うならターボがいいとその時は思ってしまった。しかし今回、NAの上級グレードに乗ってみて、もうNAで十分では、と考えを改めた。特にNAらしからぬ太いトルク感と、それによく合うしっとり柔らかな乗り心地は、軽自動車とは思えないもの。クルマはトルクだと言ってきたが、660ccという排気量でよくぞここまでと感動した。 ただし絶対的には速くないので、クルマ好きとしてはやはりターボが欲しくなる。背の高さをまったく感じさせない安定したコーナリングゆえ、ターボなら楽しく峠を走ることだってできそうな気がしたし。
 
ホンダ N-BOXのインテリア画像
室内の究極的な広さ、多彩なシートアレンジ、積載性の高さ、メーターやナビが一番高いところにあるインパネ造形の素晴らしさなど、少しフェミニンになった外観スタイル以外は文句のつけようがない。軽の枠内でよくぞここまで、というほど作り込まれている。さらに高速道路においてホンダセンシングのACCで前のクルマについて追従走行させていると、その静かな室内も相まって、これホントに軽自動車なの、と思えてくる。速度設定の上限が相変わらず115km/hなのが残念なほど、高速巡航が楽な軽だった。まあ、0km/hまで作動する全車速対応であれば「自動運転」感はより高まるのだが、そこは次のお楽しみにしておこう。

これからの自動車のあり方

ホンダ N-BOXの荷室画像
というわけで、すごい軽自動車だ、と言いたいが、これはもはや軽ではなく、たまたまいいなと思ったものが軽だった、ということになるのかもしれない。小さくて広いクルマを求めて、タンク4兄弟あたりと道具としての出来の良さを比較したら、こちらのほうが上ではないかと思う。値段的にも大差ないから「タンクじゃなくてこれを選んだら、軽といわれるクルマだったので、維持費とか安くて助かった」、そんな人だって今後は出てきそうだ。 そう考えていくと、いやもうこれはクルマですらない、のではないかと思い至る。少なくともクルマ好きが考えるクルマではない。あえて言えば、便利な移動道具だ。生活の足そのもの。都会の人には分からないかもしれないが、日本の大半は、自家用車しか移動の足はないというところである。移動の自由を獲得するには自走する乗り物に乗るしかない。移動を経済的に、快適にする道具が必需品だ。そんな乗り物としてN-BOXは最高のものだろう。豪華仕様で総額200万円だとしても、10年乗って下取りに出せば月額1万5000円ほどで乗れる計算だ。このお金で快適な生活、移動の自由が手に入る。コストパフォーマンスは高い。これがホンダの言う「N for Life」なのだろう。
 
Honda 家モビConcept(東京モーターショー 2017)の画像 Honda 家モビConcept(東京モーターショー 2017)
クルマ好きが好むようなクルマでないこと、それがこれからの自動車というもののあり方、その主流になっていくと思う。便利で経済的な道具であれば、ガソリンエンジンであろうと、電気モーターであろうと、どちらでもいい。ぶつからないのは当然で、自動運転も当たり前で、燃費が良くて、走りは普通、そういうものが自動車というものになっていくはずだ。N-BOXはそのさきがけなのだろう。 その意味では、訴求の仕方がクルマ好きなオッサンに「なるほど」と思わせるものではなく、ファッショナブルな都会の女性狙いといったマーケティング戦略であるのは大正解ということになる。これはもうイケアの家具みたいなもの。低調に終わった今年の東京モーターショーにホンダが出していた、家の一部が外れて走り出すというコンセプトはN-BOXの未来の姿かもしれない。

クルマ屋というより生活道具屋

ホンダ N-BOXとリベイドE500の画像 新型N-BOXとリベイドE500
そして東京モーターショーのホンダといえば、倒れないバイク。これもバイクではない何かをホンダが作ろうとしているように思えたが、そんなホンダは、考えてみれば今もクルマ以外の製品が多い。N-BOXの発表会でもハンディータイプの最大出力500Wリチウムイオン蓄電器「LiB-AID(リベイド) E500」が展示されていた。お得意のエンジン発電機じゃなく、蓄電機だ。これなどまさに生活に役に立つ道具。やはり生活の足であるカブも健在だし、ホンダという会社はクルマ屋というより生活道具屋なのかもしれない。それは自動車が今後クルマでないものになっていく方向性には合っている。ホンダは将来、クルマ屋のトヨタや日産よりも強い企業になっているのかもしれない。 今年のCOTY(日本カー・オブ・ザ・イヤー)はおそらくN-BOXが獲ると思うが、選者はどのように評価するのだろうか。これまでの価値観のクルマ「ではないもの」をイヤーカーに選ぶにあたって、どの人がどう評価して投票するのか楽しみだ。 最後に、そんな「クルマじゃないもの」の尖兵であるN-BOXに対して、クルマ好きのジジイからのお願い。快適な運転席空間はそのままに、リアを小さな荷台にして軽トラ仕様を作ってもらえないだろうか。軽トラこそ地方に住むオヤジの生活の道具そのもの。その意味ではN-BOXの思想にだって十分んい合致するはず。もちろんリアの荷室には「リベイド E500」が標準装備されていて欲しい。そこまでやってくれたら、新型NSXを見てなんだかなあと思っている、N360以来の往年のホンダファンも、さすがホンダと思うはずなのだが。